遠い夏の思い出
もうすぐ祖父の24回忌である

温泉のあるちいさな田舎町

おじが癌で亡くなって
祖母が追い出されて
そこに自分の母親を連れてきた叔母

本家なのに、
祖父や祖母のにおいなんてとっくに消えてしまった田舎

上京した両親の邪魔をしないように
2歳まで私は祖父母とそこで過ごした

夏の草いきれ
どこまでも続く山道
「危ないぞ」とやさしく後ろから声がかかる
「早く早く」とそれをせかして走る少女だった頃の私

蝉の泣く声
汗で湿ったシャツの袖口で額をぬぐって
祖父とよく登った山に
温泉が沸いたのは
祖父が亡くなってすぐの頃だった

もう帰れないあの頃

祖父が、この世で一番好きだった
あの頃

あれから24年かぁ

早いなぁ・・・・


狭心症発作で逝った祖父
今そばにいられたらすこしは長生きさせてあげられたかもしれない
なにかしら対応できたかもしれない
目の前に薬があったのに、それに届かないまま事切れた祖父

祖父が亡くなってから、おじ夫婦が乗っ取った祖父の家
叔父が早くに亡くなってから、叔母が乗っ取った祖母の家


庭の盆栽の中を、犬と駆け回っていたあの頃
毎年、親戚で集まってお餅をついていたあの頃

どこまでも続く緑と、川のせせらぎ

大好きな人のいる
大好きな町


今はどこにもいない


どこにもない町並みも風景も


あの頃も



私は大人になってしまった

知りたくないこともたくさん知ってしまった


唯一変わっていないのは
今でも貴方が大好きだってことだ

おじいちゃん
おばあちゃん

一人でお墓参りにいこうかな

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滴

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